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ジェイ・Z、アルマン・ド・ブリニャック、LVMH ── あるラッパーのシャンパーニュ史
2021年2月、LVMHモエ・ヘネシーがアルマン・ド・ブリニャック(通称エース・オブ・スペーズ)の株式50%をショーン・カーター(ジェイ・Z)から取得した経緯を振り返る。
何が起きたか
2021年2月、LVMHモエ・ヘネシーは、ラッパー兼起業家のショーン・カーター(ジェイ・Z)から、シャンパーニュ・アルマン・ド・ブリニャック(通称エース・オブ・スペーズ)の株式50%を取得した。これによりカーターとLVMHは同ブランドの対等なパートナーとなった。取引額は両者とも非開示としている。同ブランドは、モンターニュ・ド・ランスのシニー=レ=ローズに拠点を置く家族経営のシャンパーニュ・カティエが、2006年の発売以来、すべてのボトルの醸造と出荷を担っている。
この取引によりアルマン・ド・ブリニャックは、すでにモエ・エ・シャンドン、ヴーヴ・クリコ、クリュッグ、リュイナール、ドン・ペリニヨンを擁するLVMHの傘下に入った形となったが、カーターは引き続き株主にとどまり、製造はカティエが従来どおり担当している。
なぜ重要か
アルマン・ド・ブリニャックは特異な位置にある。伝統的なシャンパーニュ・メゾンというよりは、ブランドとして組み立てられている。同名の歴史的なカーヴはなく、自社畑もなく、創業家もいない。あるのは、ラベルと、メタリックな金色のボトル形状、そしてピューター製のスペードのエース紋章であり、その価値の多くはセレブリティとの結びつきによって形成されてきた。
LVMHがこの種の資産に関心を示すこと自体は、新しい話ではない。同グループはこの20年あまりにわたり、認知度の高いシャンパーニュの名を一つの傘の下に集めてきた。アルマン・ド・ブリニャックは、モエ・ヘネシーの既存ポートフォリオでは十分にカバーできていなかったセレブリティ主導のラグジュアリー領域に、その戦略を拡張したことになる。カーターにとっては、一定の支配権を譲る代わりに、世界最大のシャンパーニュ流通網へのアクセスを得る取引であった。
経緯
カーターのシャンパーニュへの関心が公になったのは2006年、ルイ・ロデレールのクリスタルを自身のミュージックビデオや楽曲から外したときである。きっかけは、当時のロデレール社社長フレデリック・ルゾーがThe Economist誌のインタビューで、ヒップホップ層の支持についてこう述べたことだった。「人々が買うのを禁じることはできない。ドン・ペリニヨンやクリュッグであれば、彼らの売上を喜んで引き受けるだろう」。カーターはこれを人種差別的な発言だと指摘し、ボイコットを呼びかけた。
アルマン・ド・ブリニャックはその直後にカーターの作品に登場し、同年公開の「Show Me What You Got」のミュージックビデオに金色のボトルが映り込んだ。その後の報道により、カーターはブランドを開発した代理店ソブリン・ブランズを通じて経済的な利害関係を持っていたこと、そして2014年に商標を完全に取得したことが明らかになっている。2021年のLVMHとの合意は、その所有関係を共同事業に転換し、アルマン・ド・ブリニャックにグループのカーヴ、流通網、小売関係へのアクセスをもたらした。
製造側の構図は終始安定している。1763年創業のシャンパーニュ・カティエは、モンターニュ・ド・ランスに約33ヘクタールの畑を持ち、ブリュット・ゴールド、ロゼ、ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、ドゥミ・セックに至るすべてのアルマン・ド・ブリニャックの醸造を担い続けている。
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